子供の矯正 反対咬合(受け口)
子供の矯正治療
乳歯と永久歯が混在する時期を「混合歯列期」といい、この時期に行う矯正治療を「第1期治療(前期治療)」と呼びます。多くは小学生の時期で、学校歯科健診で矯正治療を勧められることもあります。
矯正治療の最終的な目的は、大人になった時点で良い歯並びや嚙み合わせであることです。従って、思春期など骨が大きく成長する時期に新たな不調が発現する可能性も高く、永久歯列期の「第2期治療(後期治療)」で最終的な歯並びや口元全体のバランスを整えることも多くなります。
そのため、子供の矯正治療では、無駄に長期間の治療とならないで済むよう、適切な治療開始時期を見極める必要があります。当院では第1期治療を行うことで患者さんにメリットがある場合に治療をお勧めするようにしています。お子さんの症状や成長発育を鑑みて、現時点では矯正治療を行う必要がないと判断した場合は、経過観察を続けながら適切な開始時期まで待つようにしています。
当院で第1期治療をお勧めする症状・判断基準
- 上下の顎の成長発育に不調和がみられる場合。
骨格性の上顎前突、下顎前突、開咬、顎の変形など、成長期に放置することにより症状が過度に悪化することが心配されるような場合。 - 第1期治療を行うことで、永久歯列期での治療(第2期治療以降)の内容を軽減できる場合。
- 第1期治療を行うことで、永久歯を抜歯する可能性が低下するような場合。
反対咬合とは
下の前歯や下顎が上の前歯や上顎よりも前方に出ている状態で、「受け口」や「しゃくれ」などと呼ばれることもあります。親からの遺伝や歯の生え変わり時の不調、骨格の発育の問題、習癖など、原因はさまざまです。
子供の反対咬合(受け口・下顎前突)の場合、乳歯と永久歯が混在する小学生の時期から治療を開始することで、効果的な治療ができる場合があります。また、反対咬合のかみ合わせは、歯や顎への負担が大きいため、早期治療することも多くなります。
尚、第1期治療で症状が改善されても、思春期を迎え、身長が極端に伸びる頃、上下顎骨も大きく成長発育して反対咬合が再度出現することがあります。
セカンドオピニオンで来院される患者さんが、「小学生の時、反対咬合を近所の先生に治してもらったが、中学生になったらまた反対咬合に後戻りしてしまった」と言われることがあります。しかし、新たな症状が出現した結果であり、「後戻り」とはいえません。担当医の説明力の不足があります。
子供の反対咬合・受け口の治療例(非抜歯治療)
9歳の時に反対咬合(受け口)で相談にみえた患者さんです。
この方の症状は、反対咬合(受け口)が主たる問題のようにみえますが、上下顎骨の成長発育の不調和(上顎骨の劣成長+下顎骨の過成長)が大きな要因となり、結果として反対咬合が生じたものです。
小学生の時期は、身体の成長と同時に顎骨も発達する時期ですので、その時期に上下の顎骨の成長発育を適切な状態に誘導しながら治療を行うことで、有効な治療が行えます。
矯正治療前後の写真
治療前
治療後
矯正治療の結果
9歳で第1期治療を開始し、第2期治療を経て14歳で非抜歯にて治療を終了しました。反対咬合が改善され、上下の顎のバランスが整った綺麗な歯並びになりました。
このようなケースで、永久歯が生え揃い、顎の成長が終わってから治療を開始した場合では、抜歯による治療や顎の外科手術を併用した治療が必要になることも少なくありません。
【治療の詳細】
- 主訴:反対咬合、学校検診からの指摘、正中線の偏位
- 診断名・症状:骨格性3級、下顎前突、前歯~小臼歯にかけての反対咬合、正中線の偏位、上顎骨のわずかな劣成長データ、下顎骨の非対称性の発育等
- 年齢:9歳
- 治療に用いた主な装置:第1期 リンガルアーチ、セクショナルアーチ、上顎前方牽引装置、チンキャップ、一時保定装置(永久歯交換まで) 、第2期 マルチブラケット装置(スタンダードエッジワイズ<.018″×.025″>)、保定装置
- 抜歯部位:なし
- 治療期間及び回数:30か月・月1回程度通院、保定約2年・保定期間で8回通院
- 治療費概算(自費):1,210,000円(税込)
- 検査診断44,000円(税込)(第2期移行時での検査を含む)
- 装置(保定装置を含む) 第1期440,000円(税込)、第2期495,000円(税込)(第1期、第2期共に12回の分割可)
- 毎回の処置 5,500円(税込)
- リスク・副作用:成長期に下顎骨の過度の成長が出現する場合、抜歯・下顎骨切り等の顎変形症としての扱いになる可能性。歯根吸収、変色、歯肉退縮、骨性癒着等