反対咬合(顎変形症)・外科矯正
顎変形症とは
反対咬合とは、下の前歯や下顎が上の前歯や上顎よりも前方に出ている状態で、「受け口」や「しゃくれ」などと呼ばれることもあります。反対咬合の中でも「顎変形症」と診断されるケースは、上顎や下顎の大きさ・位置・形の異常、バランスや嚙み合わせの異常により、機能不全がある状態をいいます。
親からの遺伝性、歯の生え変わり時の不調、骨格の発育の問題、習癖など、原因はさまざまです。
顎変形症と診断された場合は、顎の骨を切って移動する外科手術を伴う治療が必要になります。当院は「顎口腔機能診断施設」の指定を受けていますので、健康保険を適用して治療を行うことができます。
顎変形症でも、外科手術を望まずに矯正単独で治療する場合は、健康保険の適用は受けられません。
矯正治療単独の治療例はこちらをご覧ください。
顎変形症の診断は、精密検査の結果で判断しますが、以下のケースが目安となります。
- 下顎が大きく出ている、しゃくれている
- 下顎が大きく後退している、顎(オトガイ)がないように見える
- 顎が曲がっている(顔面非対称)
外科的矯正治療の流れ
顎変形症と診断し、患者さんが外科的矯正治療を希望される場合は、当院と提携病院(主に大学等の公的医療施設)の連携での治療が進みます。
顎変形症の反対咬合の治療例
21歳の患者さんです。反対咬合や顔の歪み、しゃべりにくさなどを主訴に来院されました。この患者さんの場合は、歯のみを移動させる矯正治療単独では十分な改善が見込めないため、顎の外科手術を併用した矯正治療についてご説明しました。
手術は提携の大学病院の口腔外科をご紹介しました。外科矯正手術では、骨格の根本的な解決ができるため、顔貌の大きな改善が期待できます。ただし、下顎骨の左右の骨切り量は算出できるものの、咬合に関係する筋肉群の長さ等の調整の手術はしないため、術後リラックスした時に下顎の位置が筋肉に左右され少し顔の歪みが生じる場合はあります。
外科手術には当然伴うリスクなどもあるため、21歳の患者さんにとっては心配なことも大きかったと思います。担当の口腔外科医に質問すべきことなども伝え、できるかぎり患者さんの不安を解消できるようサポートしながらの矯正治療を行っていきます。
矯正治療前後の写真
治療前
治療後
矯正治療の結果
術後矯正時の様子
外科手術の前に当院にて約1年間の術前矯正を行い、大学病院での2週間の入院・手術後は、また当院にて術後矯正を約1年半行いました。
治療完了後は、顎の歪みと反対咬合特有の顔立ちの改善が見られました。長い間のしゃべりにくさも解消し、コンプレックスの解消に繋がりました。
【治療の詳細】
- 主訴:反対咬合、正中線のズレ、八重歯、顔の歪み、下唇のほん転、しゃべりにくさ等
- 診断名・症状:骨格性3級、下顎骨遅成長と非対称性の発育、叢生、正中線の偏位、左側交叉咬合等を伴う顎変形症、顎の離断を要す
- 治療計画:顎変形症の治療、下顎骨骨切り術、下顎左右第三大臼歯の術前抜歯
- 年齢:21歳
- 治療に用いた主な装置:マルチブラケット装置(スタンダードエッジワイズ<.018″×.025″>)、保定装置
- 抜歯部位:上下左右第一小臼歯、必要に応じて第三大臼歯(親知らず)
- 治療期間及び回数:32か月・月1回程度通院、保定約2年・保定期間で5回通院
- 治療費概算(自費):健康保険3割負担で40万円程度
- リスク・副作用:歯根吸収、変色、歯肉退縮、歯間鼓形空隙の開大(ブラックトライアングルの出現)、骨性癒着等