大人の矯正治療
大人の矯正治療は患者さんの主訴が明確なため、治療に対する協力を得やすい傾向にあります。
コンプレックスやお悩みの原因を解消するために、ご自分の意思で矯正治療を開始するので、治療に前向きに取り組んでくださる患者さんも多く、その結果、治療計画通りスムーズに完了するケースも多くなります。
ただし、大人の場合は矯正治療中にライフスタイルが変わることもあります。
就職や転職、結婚、出産、転勤や転居など、当初の予定を軌道修正しなければならない場合も出てくるでしょう。
当院では、患者さんが無理なく治療を継続できるよう、できる限りの協力をいたしますので、安心して矯正治療にチャレンジしてください。
大人の矯正治療のメリット・デメリット
メリット
- 骨の成長が完了しているため、成長予測や歯の生えかわりといった不確定要素が無く、治療のゴールが明確で、予定通りに進みやすい。
- 患者さんが矯正治療の必要性や歯が動く仕組みなどをしっかり理解しながら、主体性をもって治療を進めていくことができる。
- 歯科矯正用アンカースクリュー(※)を併用することもできる。
デメリット
- 顎の成長は見込めないため、歯の移動による治療となり、抜歯が必要になることが少なくない。
- 口腔内の虫歯、補綴物(かぶせ物)、欠損歯、歯周病等の存在により、正中線のズレや左右の咬合機能に差を生じての終了となることが少なくない。
- 転勤や転居等のため、転医を余儀なくされることがある。
※【 歯科矯正用アンカースクリューとは 】
矯正治療の歯の移動の固定源として利用することを目的に、歯槽骨あるいは顎骨に埋入・植立するミニインプラント。
成長期の子供には使用できないため、子供の場合はヘッドギア等の装着が必要となる場合がある。
治療中の見た目が気になる方へ
矯正治療のハードルとして一番高いのが、やはり治療中の見た目ではないでしょうか?
最近では、矯正治療を行いながらテレビ出演する芸能人やスポーツ選手なども増え、大人の矯正治療の認知度はかなり上がってきました。それでもお仕事によっては、装置が見えることを良しとしない場合もあるでしょう。
当院では、歯の裏側につける舌側矯正装置での治療を選択することも可能です。ご心配なことは初診相談時にお気軽にご相談ください。
ライフスタイルの変化にも対応します
矯正治療中の結婚・出産
矯正治療は年単位の治療です。従って、治療中に結婚式やご出産を迎える方もいらっしゃるでしょう。
矯正治療中に結婚式を迎える場合、ご希望があれば一旦装置を外すことも可能です。ただし、外す期間はできるだけ短いことが望ましいので、結婚式のスケジュールなどが決まりましたらご相談ください。
※矯正装置の一時的な脱着は実費がかかります。詳しくは診察時にお尋ねください。
ご出産の場合は敢えて外さなくても良いですが、里帰り出産をはじめ、ご出産前後でしばらく通院できなくなる場合もあるかと思います。その間、ワイヤーの調整をしなくても良い状態にしたり、口腔ケアをしっかり維持できるように歯磨き指導をさせていただきます。
転勤や引っ越しにともなう転医について
矯正治療を継続できるよう、お引っ越し先の地域の矯正歯科医院へご紹介いたします。
当院の費用に関しては、治療の進行状況に応じてご返金できる分は精算をいたしますが、転医先の医院がどのくらいの費用で引き受けてくれるかはわかりません。地域による金額の違いもあると思います。
また、当院でも転居に伴う転医の患者さんをお引き受けしています。患者さんとは、改めて治療計画や処置、治療終了時の判定、治療環境等を話し合うことが大切と考えます。
矯正治療で抜歯をすることについて
大人の矯正治療の場合、顎の成長発育を治療に組み入れることはほとんど無く、主に歯の移動での治療計画となるため、歯を並べるスペースが足りない場合はどうしても抜歯が必要になります。
歯を抜きたくないがために無理な非抜歯治療を遂行すると、歯列の拡大で口元を突出させ、顔貌を損なう治療結果や後戻りを引き起こす原因になります。
抜歯を伴う治療計画となる場合は、患者さんがご納得いただけるように詳しく説明をいたします。ご心配なことはお気軽にお尋ねください。
ミドル・シニア世代の矯正治療
矯正治療の開始時期について
矯正治療は、歯や歯茎、歯槽骨が健康であれば、年齢に関係なく何歳からでも治療を開始できます。例えば、一般歯科と連携して、患者さんのブリッジ治療やインプラントを入れるスペース確保のために、矯正装置を使って歯を動かす場合もあります。
昨今、「子供と一緒に治療を始めたい」という40代の患者さん、「年を重ねて歯並びが変化してきて口元が気になるようになった」という50代の患者さん、「今後の歯の健康のためにデコボコの歯並びを解消したい」という60代の患者さんなど、ミドル・シニア世代も続々と矯正治療を始めています。
もし、歯並びや口元が気になるようであれば、一度矯正治療が可能かどうかご相談にいらしてください。生活が落ち着いた今なら、だんだん歯並びが整っていくのを楽しみながら治療を進められるのではないでしょうか?
差し歯やインプラントがあっても大丈夫?
差し歯やブリッジがあっても、歯根がしっかりしていれば矯正治療は可能です。ただし、インプラントの場合で、特に植立した本数が多いケースなどは、矯正治療は難しくなります。
インプラントの歯には、歯の移動に大きな役割を果たす歯根膜がないため、歯を動かすことができません。従って、どこの歯がインプラントなのか、何本インプラントが入っているのかによって状況は変わってきます。
成人期の矯正治療では、
● 歯が抜けてしまった箇所
● 人工的な被せ物
● 神経を除去された歯
● 過度の歯肉炎
など、マイナス因子の存在で、変則的な治療計画となることもあります。
場合によっては、かなりの悪条件下での治療となることもあるため、他の分野の医師(内科、形成外科、耳鼻科、心療内科、精神科など)と歯科医師(歯周病、補綴(ほてつ:かぶせ物の分野))とのチーム医療の必要性が高まることにもなります。
そのため、患者さんへの説明・確認・質疑応答など十分な時間を取り、可能な限り治療に対する不安の軽減、悩みの共有を図ることが重要となります。
当院では、多くのミドル・シニア世代の治療例がありますので、ご心配なことはお気軽にご相談ください。
【一般的な矯正治療】
- 治療内容:矯正装置をつけて歯を少しずつ動かし、歯並びや口元を整える治療
- 治療期間及び回数:2~3年程度(月に1回程度…24~36回)、保定期間は2年程度(3~4か月に1回の通院)
- 治療費概算(自費):約110~130万円
- リスク・副作用:歯根吸収、変色、歯肉退縮、歯間鼓形空隙の開大(ブラックトライアングルの出現)、骨性癒着等